2025年6月にTikTok Shopが日本でサービスを開始してから、ちょうど1年が経ちました。「動画を見ていたら、そのまま買っていた」——この購買体験は、検索して比較して買う従来のモール型ECとは根本的に異なります。本記事では、上陸1年で見えてきたコンテンツコマース(動画・ライブ配信起点のEC)の最新データを整理し、ヴィージェイ物産のような1人・少人数で複数モールを運営するECが、この変化にどう向き合うべきかを実務目線で解説します。

上陸1年のデータ:半年でGMV150億円・購入の7割が「コンテンツ経由」

公開されている調査・発表を整理すると、日本市場での立ち上がりは想定以上のスピードです。サービス開始から約半年で累計流通総額(GMV)は150億円超、初期は月次約1.5倍ペースで成長したと報告されています。2026年末には年間GMVが約1,283億円規模に達するという市場予測も出ており、国内EC市場の新しい一角になりつつあります。

注目すべきは中身です。2025年下半期の購入のうち約70%が動画・ライブ配信などコンテンツ経由とされ、「棚に並べて検索で見つけてもらう」のではなく「コンテンツが売り場になる」構造が数字で裏付けられました。売れ筋カテゴリは家電・デジタル(約24%)、美容・パーソナルケア(約22%)、アパレル(約20%)の3つで全体の8割超を占めています。

見逃せない事実:上位セラーの多くは海外勢

一方で、売上上位50店舗のうち日本のローカルセラーは約34%にとどまるという分析もあります。つまり、動画起点の売り場づくりに慣れた越境セラーが先行し、国内の中小ECはまだ本格参戦していないのが現状です。これは裏を返せば、国産品・産地直送品・作り手の顔が見える商品を持つ国内事業者にとって、空いている椅子がまだあるということでもあります。海外販売の文脈は越境EC市場が再加速する5つの構造要因でも解説していますが、「日本の商品をコンテンツで売る」需要は国内外の両方で伸びています。

1人・中小ECが取るべき3つの対策

対策①:いきなり出店せず「動画で語れる商品」を1つ決める

コンテンツコマースで動くのは、スペック表ではなく使用シーンとストーリーです。全商品を動画化するのは1人運営には不可能なので、「調理の過程が映える食品」「経年変化が見える雑貨」など、動画1本で魅力が伝わる商品を1つだけ選び、スマホ撮影の縦動画から始めるのが現実的です。弊社でも、ソースを使った調理シーンや真鍮製品の経年変化など「画になる瞬間」を持つ商品からSNS発信を組み立てています。

対策②:既存モールの「資産」を捨てない——併売前提で設計する

新しいチャネルが出るたびに乗り換えるのではなく、Amazon・Yahoo!ショッピング・Qoo10などで積み上げたレビューや販売実績という資産を維持したまま、新チャネルを「追加の入口」として併売するのが鉄則です。ただしチャネルが増えるほど在庫の同期ミスや受注の見落としが起きやすくなるため、一元管理の仕組みが前提になります。弊社では自社開発のマルチモールEC一元管理システム「VOMS」で受注・在庫・売上を集約し、チャネルが増えても作業量が増えない体制を組んでいます。

対策③:「フォロワー数」ではなく「保存数・購入導線」で測る

コンテンツコマースの成果指標は、フォロワー数よりも保存数・プロフィール遷移・購入導線のクリックです。投稿がバズっても買う場所への導線がなければ売上はゼロ。逆に再生数が少なくても、見た人の数%が確実に商品ページへ流れる動画は資産になります。週次でこの数字を振り返り、反応の良い型に寄せていく地道なPDCAが、広告費をかけられない中小ECの最短ルートです。

まとめ:「売り場に並べる」から「コンテンツが売り場になる」へ

上陸1年のデータが示したのは、動画起点の購買が一過性のブームではなく構造変化だということです。とはいえ、検索型のモールECがなくなるわけではありません。2026年のEC業界トレンド5選で整理した通り、勝ち筋は「複数の入口を持ちながら、運営は自動化で1人分に収める」ことにあります。まずは動画1本・商品1つから、小さく試してみてください。

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※本記事中の市場規模・GMV・構成比等の数値は、記事作成時点で公開されている調査・報道・各社発表をもとにした概数です。最新の正確な数値は各公式発表をご確認ください。
執筆:ヴィージェイ物産株式会社(神戸市長田区)